2016年4月30日土曜日

リッツ缶ロースターの使い方〜とりあえず焙煎編

ロースターの作り方を載せたので、今度は使い方の説明。
…と言っても、この「とりあえず焙煎編」では難しいことは考えない。
生豆をカップ1杯(約150g)ぐらいロースターに入れて、ガスレンジの火にかけ、ひたすら缶を上下にがしゃがしゃと振り続けるだけ。豆がおいしそうな色になったら火からおろしてザルなどに豆をあけてファンやうちわなどで冷やす。
これでオシマイ…なんだけど、これだけではあまりにも説明としては不親切なので、もう少し詳しくぼくの使い方を書いておこう。


まず、ガスの強さは、最初は強火。今回は蓋は使わない。せっかく作ったのに…と言う人は次回に使い方を説明するので捨てないように。
さて、缶を火にかけて振っていると、何だか生臭いような匂いがしてきて、缶の中の生豆がだんだん白っぽくなってくる。この段階は「水抜き」と言って、生豆の水分を飛ばす工程。この段階で、豆の表面だけでなく、内部にも十分熱を伝えて均等に水分を飛ばすことが重要で、銀杏を炒る時に使うような焙煎器を使ったいわゆる「手網焙煎」では、これがなかなか難しい。缶を使ったローストだと、缶の中に充満した熱気で水を抜くことになるので、めんどくさいことを考えなくてもそこそこうまいこと水抜きができる。

4分〜5分ぐらいで生豆を覆っている薄皮(チャフ)が剥がれてくる。自宅で焙煎すると、このチャフが飛び散ってえらいことになるんだけれど、対策はやはり次の回で。
もし2分~3分ぐらいでこの状態になるようなら、火力が強すぎる。6分以上かかるようなら火力が弱すぎる。数回、焙煎をして各自、自宅のレンジを目一杯強火にした時、4分~5分でこの状態になるように火から缶の底面までの距離を把握していただきたい。
とにかく、このあたりからロースターの穴から出たチャフのかけらが火花のようにチカチカしはじめる。白っぽくなっていた生豆も何となくベージュ色から黄色っぽくなってくる。水抜きの段階では何だか生臭いような匂いだったのが、ちょっと香ばしい(けれどコーヒーの香りではない)匂いになってくる。
強火のままで缶を振り続けて、豆の温度を上げていこう。豆の色はベージュ色から黄色、薄茶色と変化していくはず。

そのうちに缶からうっすらと煙があがりはじめ、8分~10分ぐらいで缶の中の豆が「パチッ!」という音がして爆ぜる。これが「1ハゼ」と呼ばれる現象で、最初に「パチッ!」という音がしてからすぐ連続的に「バチバチ」とにぎやかに豆が爆ぜる音が聞こえてくるはず。
もし1ハゼが5分~6分ぐらいだったら、やっぱり火が強すぎる。15分経っても1ハゼがこないようなら火が弱すぎる。
連続的にバチバチとハゼが始まったら、若干火から缶の底面までの距離を離すか、火力を少し絞るといい。1ハゼが始まってから1分程度で連続的なハゼが終わるように火力を調整する。使っているガスレンジによって、どの程度に調整すればいいかは変わるが、数回焙煎してみればわかってくると思う。

1ハゼが終わるあたりで、豆はコーヒーとして飲める状態になっている。この時点で焙煎を終了すると、ミディアムロースト(浅煎)と呼ばれる焙煎度のコーヒーになって、酸味が強いあっさりした味のコーヒーになる。
ここからさらに缶を火にかけて振り続けると、缶の中の豆の色がだんだん濃くなってくる。
1ハゼの後1分ぐらいでハイロースト(中煎)。酸味がやや少なくなって、苦味も出てくる。
さらに焙煎を続けると、2分ぐらいで今度は「ピチッ」という音が聞こえるはず。これが2ハゼというやつで、1ハゼよりも軽い音になる。このあたりになると、豆からかなりの煙が出始めているはず。

1ハゼ終了から2ハゼ開始までが1分半~3分ぐらいになるように火力を調整するといいのだけれど、これはもう何回か焙煎をして適当な火力をつかむようにするしかない。何しろ空き缶ロースターなので、温度をコントロールするためのノブやつまみがついているわけではない。ガスレンジの炎を調節するか、火からの距離を調節するか。
1ハゼから2ハゼまでの間の温度調節によってコーヒーの味は変わるのだけど、最初はあまり温度の調節のことを気にせず、とにかく1ハゼで火力を絞ったら、そのまま焙煎を最後まで続けるというのがいいかもしれない。

2ハゼが始まるまでがシティロースト(中深煎)。酸味が少なくなって、苦味が強くなってくる。
ペーパードリップで飲むコーヒーなら、ハイローストからシティローストぐらいが一般的だと思う。
もっと苦いコーヒーが好きなら、さらに焙煎を続けよう。火力はさらに絞る。

2ハゼがにぎやかに「ピチピチ」と始まったあたりがフルシティロースト(深煎)。さらに苦味が強くなるが、多少酸味も残っている。ぼくが好きなコーヒーはこのあたりの焙煎度で、ペーパードリップでもよし、エスプレッソでもよし。豆の色は濃くなっているけれど、まだ濃い茶褐色。
ここまでで焙煎開始から10分~15分ぐらい。

さらに焙煎を続けると、2ハゼが終わる。2ハゼが終わるあたりの段階がフレンチロースト(極深煎)。苦味の強いコーヒーで、酸味はほとんどなくなり、豆の色もコーヒー色というより黒に近くなって、煙ももうもうと上がっている。アイスコーヒーや、カフェラテみたいにミルクと合わせるコーヒーならこのあたりまで焙煎してもいい。

それでもさらに焙煎を続けると、豆の色は黒くなって、煙も盛大に上がってくる。そのうち豆が焦げて炭になって、もはやコーヒーとは言えないものになるのだが、炭になる前に焙煎を止めるとイタリアンロースト。ひたすら苦いコーヒーになる。豆の個性なんてものは煙とともに飛んでしまう。それでもまだ炭ではなく、コーヒーはコーヒーなので、コーヒーの味はする。マンデリンのように苦味がおいしいコーヒーは、これぐらいまで煎り込んでも悪くない。またコーヒー牛乳みたいな飲み物や、コーヒーゼリーやティラミスのように、コーヒーの苦味を楽しむスイーツに使うにも適当。

どの段階で焙煎を終了するかは各自のお好み次第。焙煎度ごとの特徴や豆の色あいについては、たとえばUCCコーヒーの焙煎のページなどを参考にしていただきたい。
焙煎を終了するときは、火を止めてすぐに缶の中の熱々の豆を大きめのザルなどに移し、扇風機などでできるだけ早く冷ます。熱いままで置いておくと、その状態で焙煎が進み、味も抜けてしまうので「できるだけ早く冷ます」ことが重要だ。
このとき、扇風機の風をあてると、豆とともに出てきた缶の中のチャフが舞い上がって、なかなかすごい状態になるかもしれない。…いや、確実にすごいことになる。掃除機をスタンバイさせておくといいが、焙煎前にチャフを洗い流してしまうという方法もある。これについては次回。

焙煎直後のコーヒーは、飲んで飲めないことはないけど、思ったよりおいしくない。コーヒー豆は鮮度が重要、煎りたての豆が最高、なんていうけれど、実は焙煎してから2日~3日経ったあたりからおいしくなる。1週間ぐらい経つとだんだん味や香りが落ちてきて2週間ぐらいが限度。その後はコーヒーとは異なる何か苦い飲み物になる。
豆が冷えたら、適当な容器に入れて2日~3日そのまま常温で置いておこう。よくコーヒー豆を冷凍庫に入れて保存するなんて人がいるけれど、その必要はない。そもそも焙煎したコーヒーは長期間保存するようなものじゃない。だからこそ、1週間以内に飲みきれる程度の量を自宅で焙煎することに意味があるってものだ。

空き缶で焙煎したコーヒーも、新鮮なうちはプロが焙煎したコーヒーに負けないぐらいおいしい。
もちろん、プロの焙煎に勝つというわけにはいかないけれど、いい加減な喫茶店で出てくるようなコーヒーよりは格段においしいはず。なにしろ新鮮なコーヒーは、味も香りもすばらしい。その上、自分の好きな豆を自由に選んで、好きな味に煎り上げることができる。作り方の説明のところにも書いたけれど、コーヒー屋に並んでいる焙煎豆は無数の種類があるようでも、「この味のコーヒーがほしい」と思って探すと案外見つからなかったりする。

プロが使う焙煎機は数百万もする。数百円の空き缶焙煎器とはずいぶん違う。しかしその違いはコーヒーを飲む側よりは、コーヒーを売る側の都合という部分が大きい。数百万と数百円の違いほどに「おいしさ」に違いはない。そもそもコーヒーの焙煎なんて生の豆を加熱するだけ。まあ調理のプロセスとしては焼き芋みたいなもので、専門的に焼き芋を作るなら石焼グリルがいいかもしれないけど、家庭のガスレンジやオーブンで焼いても十分おいしい焼き芋が焼ける。コーヒーだって同じで、数百万のロースターじゃなくても、鍋があれば焙煎はできる。ただ、鍋だと均一に、適当な時間内に焙煎するのが難しいというだけで、そのへん、穴あきの空き缶でやるとうまくいくということで、基本的な焙煎の原理は、数百万のロースターでも数百円のロースターでも同じ。
当然、違いがわかるハイエンドのコーヒーマニアだったら、あるいは味が薄いとか、香りが少ないとか、文句を言うかもしれないけれど、幸いなことにぼくはその種のコーヒーマニアではなく単なるコーヒー好きなので、毎日普通においしいコーヒーが飲めればハッピーである。思った通りに焙煎できなくても、「あ、こういう味も悪くない」と思って飲めばそれまで。普通のコーヒー好きなら、新鮮なコーヒーならではのおいしさを十分に堪能できれば何の問題もないと思う。
そんなわけで、普通においしいコーヒーを飲みたいというのなら、あまり難しいことは考える必要はない。しかしこのリッツ缶ロースターでも、ここに書いた内容ばかりでなく、火力や時間、蓋の有無などを工夫することで、さらに一段階上のコーヒーにチャレンジすることもできる。
次はそのへんの工夫をまとめてみることにしよう。

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