2012年12月24日月曜日

バターコーヒー

コーヒーにバターを浮かべて飲む。

ちょっと異様な取り合わせのように感じるかもしれないけれど、考えてみればバターは生クリームの脂肪分を固めたものなのだから、成分的にはコーヒーにクリームと似たようなもの。怖がる必要はない。

バターコーヒーと言っても特別なものではない。普通にいれたコーヒーに好みの量のバターを浮かべるだけでもいい。バターの量は好みだけれど、あまりたくさんいれるとバタ臭くなる。個人的にはバターをひとかけ2-3g程度に、砂糖をひとさじぐらいが好み。

ちょっと本気でおいしいバターコーヒーが飲みたければ、深煎りにしたブラジルやマンデリンなどの苦味が強いコーヒーを少し濃い目にいれて、できるだけ上等な無塩バターを浮かべる。

パンに塗るような普通の有塩バターを使うと、バターに含まれる塩分がせっかくのコーヒーの風味をぼやかしてしまう。だからここは、ぜひとも上等な無塩バターを使いたい。すっきりしたバターの脂肪分がコーヒーの風味をそこなうことなく、苦味の角を丸くしてマイルドな味わいにしてくれる。

だけどバターコーヒーの本領は、たぶんそんな上品な飲み方じゃなくて、コーヒー好きが「こんなもの、飲めたもんじゃない」と放り出すようなワイルドな味がする安物の豆でいれたコーヒーに、そこらのバターを浮かべたものなんじゃないかと思う。この仮説はマンデリンも無塩バターも高いから買えない、という貧乏人(オレのことだ)に支持されるはずだ。

この場合、できるだけ安い深煎りコーヒーに、普通の有塩バターをたっぷりと浮かべる。上等なコーヒーと無塩バターの組み合わせのときよりもバターはたっぷり、ちょっとバタ臭いかなと思うぐらいが適量だ。
コーヒーのお勧めは、スーパーで安く売ってる焦げた麦茶みたいな味の「アイスコーヒー用ブレンド」だ。粉からいれるのがめんどくさければ、安いインスタントコーヒーでもいい。とかにく安物のコーヒー豆やインスタントコーヒーにたっぷり配合されているロブスタは、雑味が多く、ロブ臭さといわれるような特有の味がするので「まずい」と言われるわけだけど、バターの塩分は、このロブスタの雑味を殺し、脂肪分が安っぽい味をまろやかにしてくれる。そしてロブスタがそれなりに持っている独特の風味と、たっぷり入れたバターのコクと香りが絶妙にマッチして、なかなかいい感じになる。

ところで、バターとコーヒーの組み合わせには、いろんなバリエーションやアレンジがある。

ぼくは飲んだことがないのだけれど、一部で流行っているらしいのが濃い目のコーヒーに無塩バターを入れ、さらにココナッツミルクを入れてガーッとかき混ぜるというレシピ。たぶん、それなりにおいしいんだろうけど、普通のバターコーヒーは「コーヒー」の範疇に入るとしても、ココナッツミルクを入れちゃうとアレンジコーヒー、フレーバーコーヒーの範疇になるんじゃないかと思う。コーヒーというより「コーヒー飲料」じゃないのかなあ。あまりアレンジコーヒーには興味がないなあ。

独特の器具を使うベトナムコーヒーで有名なベトナムでは、しばしばコーヒーを焙煎する時、あるいは焙煎後に熱いコーヒーにバターをからませるという。ベトナムのバターというのがどんなバターなのか知らないけれど、おそらく普通の有塩バターではないかと思う。ちなみに、ベトナムはフランスの植民地時代が長かったので、パンの味は日本のパンよりはるかに上だとか。バターもおそらくフランスパンにつけて食べるような種類の有塩バターだと想像する。
バターを使った焙煎は、上述のように塩分がコーヒーの雑味を隠してマイルドにしてくれると同時に、表面にからんだ油脂分によりコーヒーの日持ちがよくなるんだそうだ。
インターネットを検索してみると、日本にも焙煎後にバターをからませたコーヒー豆を売りにしているコーヒーショップもある。コーヒー専門店なら、おそらく無塩バターを使っているんだろう。飲んだ人に聞いてみると、「全然普通においしいコーヒーだよ」とのことで、バターを浮かべたコーヒーとは違う味らしい。

余談ながら、寒い時のバターコーヒーは体が温まっておいしいという。余談ついでにアイリスという韓国ドラマの中で、主人公が雪山の中で女スパイにバターコーヒーを飲ませてやる、という場面が印象的だった。ただ、ギョッとするほどたっぷりバターを入れていて、「おい、そりゃ入れすぎだろ…」とか思ったけど、映像的にはワイルドにバターナイフでざくっとすくってベトッと入れなきゃ、カッコつかないんだろうなあ。山小屋にバターがあるという設定もアレだし、極寒の山小屋のバターがあんなに柔らかいわけないだろ、とか、違和感満載の場面ではあったのだけど、まあ韓国ドラマなんてそんなもん。

ところで、有塩・無塩にこだわるようだけど有塩バターの塩分含有量は海水の塩分濃度に近い3%程度だという。食品の塩分としてはかなり濃度が高いのだが、パンに塗った時においしい濃度らしい。
話はバターからそれるけど、まずいコーヒーに塩を入れておいしくする、という技がある。

コーヒーに塩なんて、と思うかもしれないけれど、ここまでのバターコーヒーの話を読んだ人なら納得できると思う。スプーン一杯のバターに含まれる程度のわずかな塩分は、安物のコーヒーの雑味を隠す効果がある。バターコーヒーの塩分は、塩分3%りバター5gなら、150mg程度だ。
いうまでもなく、上等なコーヒーでこれをやると、せっかくのコーヒーの特徴をぼやかしてしまい、逆効果になる。
以前、イタリアのコーヒーを調べていた時に、マキネッタの上のカップにぱらっと軽く塩を入れるというのを読んだことがある。安いイタリアン・エスプレッソの粉を使うんだったらこういう手もありそう。

0 件のコメント:

コメントを投稿